ワールドカップ決勝トーナメント、ブラジル対チリのPK戦、ブラジルの5人目のキッカーはネイマールだった。22歳にしてPKのトリを務める責任感と重圧。しかしネイマールは安心してボールを蹴ることができた。なぜならPK戦の前にブラジルの守護神ジュリオ・セザルがチームメイトたちに言っていたから。「3本は止めるから安心して蹴っていいよ」と。
この日の主役はネイマールでもなければ、点を決めたダヴィド・ルイスでもない。間違いなくGKのジュリオ・セザルだ。ブラジルの守護神は前回の南アフリカワールドカップでのオランダとの敗戦で戦犯扱いされた経緯があった。また、2012年シーズンを最後にイングランドのプレミアリーグから米メジャーリーグサッカーのカナダのチーム、トロントFCに移籍したことで、トップレベルでプレーできていないとして代表選出を疑問視する声もあった。
しかしそんな批判を黙らせるかのような大活躍にジュリオ・セザルは試合後ヒーローインタビューで涙を抑えきれなかった。
「4年前は悲しくて、不快なインタビューをしなければならなかった。そして今日またこうしてインタビューをしている、今度は喜びのインタビューだけどね。前回のワールドカップから4年間僕がどんな気持ちでいたかは神様と家族だけが知っている。まだ僕の代表の歴史は終わっちゃいないんだ」。
ジュリオ・セザルのスーパープレーに対するサポーターの反応
ジュリオ・セザルの宣言通り、チリは3本のPKを外した。2本はジュリオ・セザルのセーブによるもので、もう1本はポストに当たった。運までもブラジルの守護神を援護してくれたのだ。ネイマールは試合後、ジュリオ・セザルについて、「年齢とか所属しているクラブとかが原因で批判をする人たちがたくさんいるけど、僕らのGKは小さなクラブでプレーしてる、ゴール前の巨人だ」と、その偉大さを表現した。
安心して最後のキッカーを務めされたというネイマールは、「チームメイトとも冗談を言ってたんだけど、PKではボールの位置に歩いていくまでが大変で、まるで3キロぐらい距離があるように感じる。ただ、ボールまでたどり着いて、蹴るときになったら落ち着いて蹴ることができた」と、その瞬間を振り返った。
試合後、ネイマールは感極まって涙を流した。勝利の涙。喜びの涙。実に120分間も太ももの痛みを抱えながら走り切った末の安堵の涙だった。
「今日は白髪が増えたよ。まるで死んだみたいに疲れた。苦しかったし、すごい試合だった。時間帯が関係してるのかもしれない。(暑い)午後1時に試合をするのは本当に大変。まるで決勝のような試合だった。オフェンスでもディフェンスでも両チームがすばらしいプレーをしたよ」。