ルイス・スアレスは一体なぜ噛み付いたのか。いや、今回だけではない。なぜ合計3度も同じ行為に走ったのか。赤ん坊の頃からルイス・スアレスをよく知る、父方の祖母がインタビューに応じて、その理由を語っている。
ルイス・スアレスの祖母リラ・ピリスさんは、孫について「とてもいい子」と周囲に語っている。しかし確かに「子供のころからすぐカッとなった」過去があったという。「喧嘩もあまりせず、とてもいい子で、友達思いでした。(イタリア戦で)彼に何があったのかわかりません。なんで幸せになるべきときに、あんなことをしてしまうのか。」
リラ・ピリスさんが「いい子だと」語るルイス・スアレスの中に隠された攻撃性については、「おそらく両親の離婚のせいや、私生活で起きたことが原因」と指摘。ルイス・スアレスの父もまたカッとしやすい性格の持ち主だったという。そんな父は軍人であり、地元サッカーチームの選手でもあった。ルイス・スアレスは7人の兄弟の四男であり、兄弟の中では大人しいほうだった。リラ・ピリスさんによると、誰もルイス・スアレスがまさかこれほど有名なスポーツ選手になるとは思ってなかったという。それほど家庭の中では目立たない存在だったのだ。そんな少年も父親が離婚をして家を出て行ったことで、苦しい家計を支えるために早くから働かなければならなかった。母親だけではとても7人の子供は育てられない。ルイス・スアレスはモンテビデオで道路掃除をしていた時期もある。両親の離婚がよほどショックだったのかしばらくの間、鬱状態だったという。
リラ・ピリスさんが言うように厳しく、すぐにカッとなる父親に育てられ、両親の離婚を経験するなどの家庭環境がルイス・スアレスの心になんらかの影響を与えたのだろうか。ウルグアイのレプブリカ大学のスポーツ心理学教授のパブロ・マルティネス氏はスアレスの行動についてこう説明する。
「スアレスのようなケースは、子供の頃にとても攻撃的な環境にいて、愛情を受けてこなった人がする行動で、噛み付く行為は外部の大人の攻撃から身を守る一つの方法です。他の選手たちが攻撃的になると、殴ったり、唾を吐いたり、暴言を吐いたりするのに対し、スアレスの噛み付きは子供のような心理状態にある人がする行動なのです。」
また、パブロ・マルティネス氏は「彼は以前心理カウンセラーのセラピーを受けていたので、精神をコントロールできているとばかり思っていました。しかしワールドカップ中には彼から潜在的な本能を呼び起こすようなシチュエーションがあったのだと思います」との考えを示している。