ブラジルとアルゼンチンを代表する二人のレジェンドがブラジルワールドカップをめぐり、ベネズエラのTV番組「De Zurda」で対談を果たした。その二人とはジーコとマラドーナだ。
ジーコは同番組で、予選リーグ2試合の闘いぶりを見て、ブラジル代表の現状について、「メキシコ戦の結果は妥当だ」としたうえで、「チームは組織プレーができておらず、ネイマールが全部一人でやらなければならない状況だ」とセレソンに警鐘を鳴らした。
「ブラジルはまあまあの出来。後で調子が悪いよりも、今調子が悪いほうがいい。どちらかというと初戦のほうがよかった。(メキシコ戦では)ラミレスを右MFに置いて、オスカルを左MFに置くなんて思いもしてなかった。ラミレスはいつも中央でプレーする選手だし、右サイドには適してないと思う。メキシコはすばらしいチームで結果は妥当だった。」
一方、マラドーナはブラジルの試合について、「問題はラミレスだけじゃない。ポジションについてはそれほど心配にならない。ただ、ネイマール頼りなのが心配。ネイマールがボールを持っていなければブラジルはほかに攻めの選択肢がない。それが心配だ。それにはウィリアンがいいと思う。彼がネイマールと攻撃をすればいい。ネイマールは3,40メートルも自分でドリブルしないといけないような状況で、スーパーゴールに頼ってる。左サイドならマルセロもいい。ブラジルがこんなにネイマール頼りなのは稀なこと、もっと選択肢があるはずなのに」と、ライバル国ながら冷静にブラジルの現状について語った。
ジーコはネイマール頼りのブラジルについて、2006年W杯のロナウジーニョの状況と似ていると前々回の大会を例に挙げ、「コンフェデレーションズカップではフッキが右サイド、ネイマールが左、オスカルが中央で活躍し、ブラジルは成長した。だけどそれもMFのパウリーニョがちゃんと機能していたからだ。今パウリーニョはあまり調子がよくない。それはちょうど2006年のときの問題と同じで、ロナウジーニョが世界最高の選手だったとき、周囲の選手はみんな彼に試合を決めてもらいたがっていた。サッカーはそういうものじゃない。チームスポーツなんだ。一人で試合なんて決められない。だから選手たちがネイマールに責任を押し付けて、彼が全部一人でやらないといけないような状況になっている」と話した。
解決策についてジーコは、「ブラジルがコンフェデレーションズカップでよかったのは強いマーク。あのプレッシャーがあったから、いつも最初の10分でゴールが生まれた。クロアチア戦のようなプレーをしてはないけないんだ。もっと強いマークをして、サポーターの応援を背に、どんどん攻めていかないといけない」とプレッシャーからの積極的な攻撃を挙げた。
また、ジーコはマラドーナについて過去に比較されたこともあり、ライバルとしてあげられていたものの、いつも仲が良かった、とし、「マラドーナとのことでひとつだけ忘れられないことがある。1986年W杯のときに怪我をしていて、出場するかしないかというのが議論になっていた。そのときアルゼンチンの雑誌の編集をしていた友人がメモをもってきたんだ。そこには【頑張って治してよ。僕は君の側にいるよ。調子のいい君が見たいんだ】というマラドーナのメッセージが書いてあった。そういう出来事は一生忘れられないよ。ピッチの中では敵だけど、外ではいつも大切な友人さ」とマラドーナとの思い出を振り返った。
マラドーナはジーコに対し、「今のところどのチームのプレーが一番気に入ったのか」と質問。これに対して、ジーコは、「オランダとドイツだね。ドイツはチームとしてとても強力だ。監督はベンチの選手たちを見ても、いろんな選択肢があることが分かっている。オランダは、それほど期待してなかったけど、その逆だった。もしスペインが1対0のときにもう1点決めてたら違っていただろうね。驚いたのはオランダが3点目を決めたあとでスペインのパフォーマンスががくっと下がったことだ。あの落ち方はひどかった。闘志がまるでなかったよ」と答えている。
これについてマラドーナは、「オランダはもっとゴールを決められた。5点だったけど、7点は行けたね。」とコメントした。
その一方で一番がっかりしたチームに話が及ぶと二人ともウルグアイを挙げた。ジーコは、「選手たちは戦術的にもすごいクオリティーを持っていながら、後半はコスタリカの一方的なゲームだった。相手を見くびったんだと思う。」と分析。それに対してマラドーナは、「自分もコスタリカがあれほどボールを支配するとは思わなかった。ウルグアイは試合をずっと見ていたようだった。なにもしなかった。みんなをがっかりさせたよ。まるでクオリティーがなかった。コスタリカは守って勝ったわけじゃない。攻撃して勝ったんだ。ウルグアイは昔ような南米の強いチームじゃなくなってしまった」との考えを示した。
ジーコとマラドーナという意外な組み合わせだったが、最後まで二人は息の合ったトークを繰り広げていた。きっと視聴者たちも二人の波長の良さに驚いただろうし、また気に入ったのではないだろうか。これを機に今後も二人のレジェンドのTV共演が増えるかもしれない。