W杯ブラジル代表フッキの知られざる苦労の過去

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ワールドカップでネイマールと共にブラジル代表の攻撃陣の要といえばフッキのあだ名でお馴染みのジヴァニウド・ヴィエイラ・ジ・ソウザ。Jリーグでも2005年から2008年までプレーしただけに知っている人も多いはず。しかし彼の生い立ちやその苦労を知っている人はごくわずかだろう。そこで今回は特別にフッキのこれまでの軌跡を追ってみた。

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父ジウヴァンと母マリーアの下、パライバ州カンピーナ・グランデ市に生まれたジヴァニウド・ヴィエイラ・ジ・ソウザにあだ名が付いたのは3歳のときだった。昔から強いスーパーヒーローに憧れを抱いていた彼のお気に入りが超人ハルクだった。超人ハルクを真似て自分の体より大きなガスボンベを持ち上げようとしたりするやんちゃな息子を見て、父親が「それならお前のあだ名はフッキ(ハルクのポルトガル語読み)だ」と名づけ、今に至る。3歳の頃からずっとそのあだ名で呼ばれているため、逆に本名で呼ばれると、自分のことだと気づかないことが多いという。

あだ名の通り、フッキはやんちゃで勇敢な子供だった。母親が出すものなら好き嫌いを言わず何でもパクパクと食べたことから、自然と体には肉が付いていった。特に好きな料理は肉の煮込み料理フェジョアーダ、ブラジル風バーベキュー、シュラスコといった肉料理だ。丈夫な体を授かった彼は小さい頃からよく喧嘩をし、誰のことも恐れなかったという。その一方でサッカーの試合に負けると泣き出してしまうような泣き虫な一面もあった。

フッキはブラジルの多くのサッカー選手同様貧しい家庭で育った。父親は市場で肉を売って家庭を支え、フッキはそれを小さな頃から手伝っていた。サッカーを習いたくてもクラブに月謝が払えない。近所にサッカーコートがなく、友達とサッカーをするために公園や体育館に行くにもバス代が払えず、何十分も歩いて行った。

息子にどうしてもサッカーをやらせてあげたいと思っていた父親はある日サッカークラブ、フッチボール&シアでコーチをしていたマーノさんに相談した。そこでフッキの才能を信じたマーノさんは、クラブに頼み込み月謝の半分を免除してもらった。そしてもう半分を自らの給料から払い、交通費やおやつ代まで工面した。マーノさんはフッキにとっては第二の父親ともいえる存在でフッキは今でも彼のことを敬意を示して「先生」と呼んでいる。

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幼少時代からの友人で、当時同じチームでプレーしていたジルシマール・ダ・シウヴァさんはフッキについてこう語っている。

「フッキは試合の勝敗を決定づける選手だった。ある日の試合で1対0で負けていたとき、彼は全部自分にボールをパスしてくれ、そしたら勝てるから、と言ったんだ。その通りにしたら本当に2対1で逆転して勝ったよ。負けると泣くから、絶対に負けられないんだ」

フッキはこのジルシマールさんと昨年久々の再会を果たしている。そのときも昔のことを思い出して涙した。今になっても泣き虫は治っていなかった。筋肉隆々の体でフッキはジルシマールさんをハグし、しばらく放さなかった。苦労を共にした友人との再会はフッキにとってそれほど大きな意味を持っていた。

ジルシマールさんによれば、 フッキは昔から努力家で他の選手の誰よりも練習していたという。練習が朝しかないときは昼も夜もやりたいと言ってコーチたちを困らせたこともあった。フッキに転機が訪れたのは14歳のとき。パライバ州選手権でチームが優勝し、大活躍した彼は地元の新聞に取り上げられ、プロチームのスカウトが契約にこぎつけようとクラブを訪れるようになった。プロ契約を果たしたのはフッキが16歳の2005年のこと。バイーア州サルバドールの中堅チーム、ヴィトリアでのことだった。最初の給料はわずか500レアル(約2万2000円)。それでもフッキはプロになれたことが嬉しくて両親に電話し、「これでお金持ちになれるよ」と叫んだという。

あまり知られていないが、フッキはもともとサイドバックの選手だった。それからMFをやるようになり、攻撃選手としての才能を開花させ、やがてFWにポジションを移した。プロになってからの彼の活躍はご存知の通りである。18歳にして日本に渡り、その後、ポルトガルを経て、現在はロシアのFCゼニト・サンクトペテルブルクでプレーしている。

8歳年上の妻イランさんとは日本で知り合った。ブラジル料理屋から出てきたときに一緒にいた友人がフッキに気づき話しかけたという。もちろんそのときフッキはまだ無名の選手に過ぎなかった。フッキはしかし友人ではなくイランさんに興味を示し、アタックした。イランさんはフッキからその場で電話番号を聞かれたけど、渡さなかったという。その代わりにフッキの番号を聞き、後に自分から電話をして連絡を取り、二人の交際が始まった。結婚後はチアゴ君とイアン君の二人の息子も授かった。

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有名選手と結婚するのは楽なことではない。毎日のようにファンに囲まれ、女性からも当然モテる。一度、イランさんの目の前で女性ファンがいきなりフッキにキスしたこともあった。そのときはあまりにもびっくりして笑うだけだったという。フッキはパライバ州で有名になり始めると、女性にもモテ始めたが、シャイでほとんど女性とは話せなかったと前述のマーノさんが話している。それどころか女性の話を振られるだけでも困惑してしまうような一面があったという。超人ハルクは実は奥手だったのである。

フッキにとっての憧れの選手はロマーリオとロナウド。どちらもワールドカップでブラジルを優勝に導いたFWの選手だ。今そのポジションに自分がいる。それについてフッキは、「代表では簡単なポジションはない。みんな上手い選手ばかりで、チャンスも少ない。怪我をしないで、自分のプレーをして覚えてもらわないといけない」と話している。ワールドカップについては、「実際にプレーした人だけがどれだけの興奮があるか、どれだけ偉大なものか分かる舞台。ワールドカップでプレーしたことある選手と話したけれど、みんなが別物の大会だって話すんだ。そんな体験をしたいし、上手く対峙できたらいい。世界で最も優れた代表に選ばれること、ブラジルのユニフォームを着て戦えることは何事にも変えられない。ここまでたどり着くことができるのはわずか選手だけ。本当に感謝している」と述べている。

フッキはこれまでブラジル代表で33試合に出場し、8ゴールをマークしている。人気ではネイマールの影に隠れがちだが、実力は申し分ない。本番での大活躍に期待したい。

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