世界が注目しているサッカーの国際イベント、コンフェデレーションズカップ。その開催と時期を同じくして、実はブラジル各地で今暴動が起きていることをご存じだろうか。
事の発端は今年3月25日、リオグランデ・ド・スル州ポルト・アレグレ市でバス運賃がこれまでの2レアル85センターボ(約125円)が3レアル5センターボ(約133円)に値上げしたことだった。値上げ幅を見れば日本円にしてわずか10円弱。しかし2レアル85センターボというのはブラジルの生活価値から考えると日本の285円にほぼ等しい。この国の平均月収が約1800レアル(約8万円)であることを考慮に入れると、相当割高であることが分かるだろう。メディアや政府はワールドカップや五輪などの開催を見込んで経済成長を謳う一方で国民のほとんどはその恩恵とは無縁で、そればかりか物価は高騰し、生活は苦しくなるばかりなのが現状だ。そんな国民の不満がバス運賃の値上げを機に一気に爆発した。
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値上げが実施された3月25日、ポルト・アレグレ市では学生が中心となって市の中心街でデモを開始。そのときの参加者はわずか200人程度だった。その2日後の27日、今度は市役所の建物の前でデモが行われ、参加者は初日の数倍に膨れ上がっていた。興奮して市役所の周りを包囲した学生たちに対し、警察はガス弾や催涙弾を使うなどして応戦、逮捕者や怪我人も出た。
一方、サンパウロ市では今月2日、地下鉄とバスの運賃がこれまでの3レアル(約130円)から3レアル20センターボ(約140円)に値上げした。これを受け、サンパウロ市民も黙っていなかった。6日には約2000人が市のメインストリートであるパウリスタ大通りに集結。デモ初日から警察と激しく衝突を起こし、約20人の逮捕者、50人の怪我人を出した。警察はデモ参加に対し、容赦なくゴム弾や催涙ガスを発砲。デモと無関係の通行人に当たるなどの被害もあった。
この抗議が飛び火となってデモはポルト・アレグレ市(リオグランデ・ド・スル州)、リオデジャネイロ市(リオデジャネイロ州)、ベロオリゾンテ市(ミナスジェライス州)、ベレン市(パラー州)、ブラジリア、マセイオ市(アラゴアス州)、サルバドール市(バイーア州)とブラジル全土に広がり、その規模は各都市で数万人に膨れ上がっている。また抗議の内容もこれまでのバス運賃に対するものから、ワールドカップ開催を反対する(多額の税金がスタジアム建設などに使われていることから)ものにまで広がっており、コンフェデレーションズカップのスタジアム周辺でも運動が開始された。メディアでは”お祭りムード”が強調されるブラジルだが、実際国民は今、政府に対する不信と不満を吐き出そうとしているのだ。コンフェデレーションズカップ開幕戦ブラジル対日本の試合前にジルマ・ルセフ大統領がFIFAの会長と共に挨拶をした際に会場がブーイングの荒らしに包まれたのはこのような経緯があったからである。
17日に起きた各地のデモの様子。
ブラジル人はもちろんサッカーを愛している。しかしサッカーが政治的、商業的にばかり利用されることに対してはうんざりしているのも事実だろう。ブラジル人は熱狂的なようで以外と冷静にコンフェデレーションズカップやワールドカップを捉えているのである。