ロシアW杯のコスタリカ戦を見事2対0で勝利したブラジル。2点目を決めたのはほかでもないエースのネイマールだ。そのネイマールがしかし試合後感極まって号泣した。一体何があったのか。
ネイマールにとってここまでの道のりは決して平坦ではなかった。2月に所属クラブであるパリ・サンジェルマンの試合中に踵と負傷した彼はW杯に出場できるかどうかも危ぶまれていた。
そんな中、レアル・マドリードへの移籍の噂が加熱。パリ・サンジェルマンでのチームメイトとの不仲説や監督との確執など、あることないことを散々メディアに報じられ、雑音に包まれながらも辛いリハビリに励むしかなかったのだ。
ネイマールはこのことをキャリア最大の挑戦と口にしている。

また、コンディションも100%だったわけではない。そのことはネイマールも認めていた。それでも代表に選ばれたからにはやるしかないのだ。

そもそもネイマールにとってW杯とはサッカー王国の全国民の大きな期待を背負う一大イベントというだけでなく、前回のブラジル大会の大怪我も思い出させる「恐怖」もあるのだ。それについてはジーコとの対談で心境を語っている。

サッカーは11人で戦うものだが、エースのネイマールに降りかかるプレッシャーは他の選手のものとは比べ物にならないだろう。
そのうえでW杯が開幕し、ブラジルは初戦でスイスに1対1の同点に終わった。このことでブラジルメディアは一斉にネイマールの不調やブラジル代表のパフォーマンスを非難していたのだ。
そしてやっと掴み取ったコスタリカ戦での初勝利。もうちょっとで0対0のスコアレスドローに終わるかと思われたほどの動きの固い試合だった。
そんな試合でコウチーニョが1ゴール目を決めると、ネイマールも彼の後に続いて追加点を奪った。
コスタリカ戦まで万が一同点に終わっていたら、またしてもネイマールに批判が集中していただろう。
実際、リオ五輪では最初の二試合格下に引き分けことで猛烈な批判を浴び、ネイマールの精神状態はボロボロだったのだ。このときについてもネイマールはジーコとの対談で語っている。
コスタリカ戦に勝ったことでネイマールは国民の期待に応えた。自分自身もゴールを決めてエースの義務を果たした。そういったプレッシャーから解放された末での涙だったのだ。試合後、ネイマールはインスタグラムで次のように語っている。
「僕がここにたどり着くまでどんなことをくぐりぬけてきたかなんて、みんなには分からない。ただコメントするだけならオウムだってできる。
でも実行するのは少数の人だけなんだ。涙は克服した喜びから出てきたもの、勝ちたいというガッツと気持ちから生まれたものだ。
僕の人生において物事が簡単だったためしなんてない。今だってもちろんそうだよ。そうでしょ?」
これに対し、ネイマールの気持ちを理解するチームメイトたちは次々のエールを贈っている。
カゼミーロは「ネイマールは背負っていたものを降ろす必要があったんだ。彼が泣いたことは正しいよ。普通のことだよ。だってみんなが彼に期待してるんだから」と理解を示した。
PSGでもチームメイトであるチアゴ・シウバは「ピッチの中でも試合中も泣きたい気持ちだったんだと思う。僕は彼に吐き出すように言ったんだ。だってそれだけ重い荷を背負ってきたんだから。
選手が三ヶ月もプレーから離れることは楽なことじゃないんだ。でも多くの人はそれを理解せずに彼を叩くんだ。そんなの不公平だよ」
一方、監督のチチは、「彼が泣くところは見ていないんだけど、私が言えることは代表でプレーする喜び、満足、誇りは絶大なんだ。彼には責任があって、喜びがあって、それにプレッシャーもある。なによりそういった感情を外に吐き出す勇気があるんだ」