23歳にして数々のタイトルを獲得し、偉業を達成してきたネイマール。ブラジルではサンパウロ州選手権、ブラジル選手権、リベルタドーレス杯などの主要大会を制覇し、スペインでも昨季リーガ、国王杯、チャピオンズリーグの三冠を実現させた。国際大会でもコンフェデレーションズ・カップの優勝に貢献し、MVPも獲得した。その裏でブラジルの至宝は一体どのようにしてモチベーションを維持してきたのだろうか。ネイマールを最もよく知る人物であり、父親のネイマールパパが明かした秘訣は意外なものだった。
昨シーズン、FCバルセロナが三冠をかけて奮闘中だったとき、ネイマールパパは息子に向かってこう言った。
「もし三冠を達成したら、長い休暇が取れるようにみんなで最大限の努力をするから頑張るんだよ」。
ネイマールはこれに大喜びし、実際に次々と目標の大会を制覇していった。そしてネイマールパパも約束を果たした。コパ・アメリカ後出場停止処分を受け代表から一足早く解放されると、クラブに長期休暇の許可をもらい、ネイマールは実に1ヶ月以上も休むことができたのだ。
「実際言ったとおりになった。いくつか宣伝活動はあったけど、今年はたくさん休めたと思う。昨年は(W杯で)怪我もしたこともあり、ちゃんと休めなかったから」。
ネイマールパパはネイマールが子供の頃から彼が何かを達成する度にご褒美を与えて続けている。ネイマールは23歳になった今でも親子のその習慣を続けているのだ。「ネイマールのスポンサー」でも紹介したが、2011年U20ブラジル代表の一員として南米選手権に出場した際、ネイマールにはどうしても欲しいものがあった。ネイマールパパは当時についてこう振り返っている。
「南米選手権で彼はどうしても車を欲しがっていたんだ。あのときの南米選手権はロンドン五輪の出場権がかかっていた重要な大会だった。彼の責任も大きかったし、五輪代表ではなく、クラブでプレーするほうが大事だって言った人も大勢いた。だからそのとき思ったんだ、なにか大きな目標を与えてあげないとって。難しい目標をね」。
ネイマールパパが息子に課した条件は、「得点王になること、そして決勝で2ゴールを挙げること」だった。欲しい物を買ってもらえると分かったネイマールは水を得た魚のように活き活きとピッチでプレーした。そして実際に決勝で2ゴールをマークし、得点王になったのだ。ゴールを決めた後、ネイマールは嬉しくてハンドルを切る仕草を観客席の父親に向かってしたのは有名な話だ。
「彼がハンドルを操縦するジェスチャーをしたから、横にいた妻を見て言ったんだ。”あいつ全然試合に集中してないじゃないか”ってね」。
ネイマールパパが大会後、息子から高級車を買わされたことは言うまでもない。親子がお互いに男と男の約束を果たしたのだ。
ネイマールのご褒美は昔から高級品だったわけじゃない。そのときそのときの家族の経済状況で内容は異なった。まだ家族が貧しかった頃、少年だったネイマールは父親にエアーの入ったナイキのシューズをねだった。ネイマールパパはお金がなかったので最初は道で売っている海賊版の製品をプレゼントしようした。けれども考え直して一番高いものを買った。そうすることで息子により高いモチベーションを与えようと思ったのだ。
もしネイマールパパがどこかの時点でお金をけちっていたり、約束を破っていたら今のネイマールはないかもしれない。ネイマールはいまだに子供のように父親にものをねだったり、何かの許可を得ようとお願いごとをする。まるで父親に権限を握られているのを楽しむかのように。
今季のネイマールには大きな壁が立ちはだかる。再びスペインで三冠を達成し、「六冠」を成し遂げること。そして来年にはリオ五輪が待っている。ネイマールパパはこれについて「来年はバケーションは取れないだろう。クラブとよく話し合って、五輪、そしてコパ・アメリカ・センテナリオ(コパ・アメリカ百周年大会)の出場を目指していく。まだまだ夢の実現のために頑張っていきます」と語っている。